炎の魔女と氷の皇帝*転生したら弟子と契約結婚をすることになりました*

新しい侍女

「お初にお目にかかります。ユナと申します」
「サシャでございます」

 部屋に入ってきたのは、二人の侍女だった。ライリーよりも少し年上のようだ。硬い表情のまま、ていねいにお辞儀をした。

「ユナとサシャ、これからお世話になります。よろしくお願いします」

 ミーシャが頭をさげると、二人は驚いていた。お互いの顔を見て少し困惑している。

「ミーシャさま、いつも言っているでしょう。侍女に敬語はいりません」

 ライリーにこそっと注意されて、苦笑いを返す。
 身分を隠して街をうろついていたミーシャは、初対面の相手にはまず敬語を使っていた。その癖がつい出てしまった。

「今は二名だけですが、すぐに増員をいたします。しばらくは不便をおかけしますが、お許しください」
「私にはライリーもいますし、侍女はそれほど必要ありませんよ」

 薬の調合は危険を伴うこともある。人が多いと逆に不便だ。

「この部屋はそういうわけにはいきません。人員配置もありますし、陛下のようすも気になるので私もこれでさがらせていただきます」
「ジーンさまお待ちください。一つだけ、よろしいですか?」

 部屋を出て行こうとする彼をミーシャは引き留めた。

「陛下が、炎の鳥を欲したら、すぐに知らせてください」

 リアムの体調について知っているのは一部の者だけ。
 言葉を伏せて伝えたが、ジーンにはちゃんと伝わった。彼は目を細め「かしこまりました」とほほえんだ。

「では、さっそく準備に取りかかりましょう」

 ジーンがさがると、ライリーがきびきびと動きだした。彼女は衣装部屋の中へ入るなり、歓喜の声をあげた。

「ミーシャさま、見てください! すごいです。豪華です! すてきなドレスがいっぱい。装飾品もたくさん。……よだれが出そうです!」
「よだれはやめて……」

 ミーシャも中をのぞいた。
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