炎の魔女と氷の皇帝*転生したら弟子と契約結婚をすることになりました*
「陛下。あのっ……」
「ひらひらのドレスに、そんな頼りない履き物で雪の中は歩けないだろう」
――そうだけど、また抱っこ!
「……陛下は人に外套を預けたり、抱きあげるのがお好きのようですね」
「そうかもしれない」
飄々とした顔で言い返されて、ミーシャは口を噤むしかなかった。
外に出ると、冷たくて強い風が顔に当たった。頭上に広がる闇夜からは、白い雪がひらひらと静かに舞い降りてくる。
さくさくと、雪を踏みしめる音だけが耳に聞こえる。侍女のライリーもジーンたちもいない。静かな夜の雪の庭に二人きりだ。
「雪、きれいですね」
「雪がお気に召したようでよかった」
「私、雪、大好きですよ?」
笑いかけると、リアムはなぜか顔を逸らしてしまった。
「陛下、どうかされました?」
「……なんでもない」
――雪にはしゃくだなんて、子どもっぽいと思われたかしら。……あれ?
暗がりに目が慣れてくると、ふと気づいたことがあった。
「陛下。あの、あそこ。どうして庭が光っているんですか?」
「氷の泉だ。泉だけど一年中、凍っている」
「青白く発光しているということは……」
「流氷の結界の一部として機能している」
リアムは歩きながら続けた。
「宮殿内の泉は四カ所あるが、今見えている中央の泉が一番大きい。氷の宮殿は短い夏でも雪が残る。そして泉は、この広いグレシャー帝国の川と繋がり作用している」
「帝国ってとても広いのに、泉の水は帝国の川全部と繋がっているということですか?」
リアムは立ち止まると、遠くに見える泉の一つを指差した。
「ひらひらのドレスに、そんな頼りない履き物で雪の中は歩けないだろう」
――そうだけど、また抱っこ!
「……陛下は人に外套を預けたり、抱きあげるのがお好きのようですね」
「そうかもしれない」
飄々とした顔で言い返されて、ミーシャは口を噤むしかなかった。
外に出ると、冷たくて強い風が顔に当たった。頭上に広がる闇夜からは、白い雪がひらひらと静かに舞い降りてくる。
さくさくと、雪を踏みしめる音だけが耳に聞こえる。侍女のライリーもジーンたちもいない。静かな夜の雪の庭に二人きりだ。
「雪、きれいですね」
「雪がお気に召したようでよかった」
「私、雪、大好きですよ?」
笑いかけると、リアムはなぜか顔を逸らしてしまった。
「陛下、どうかされました?」
「……なんでもない」
――雪にはしゃくだなんて、子どもっぽいと思われたかしら。……あれ?
暗がりに目が慣れてくると、ふと気づいたことがあった。
「陛下。あの、あそこ。どうして庭が光っているんですか?」
「氷の泉だ。泉だけど一年中、凍っている」
「青白く発光しているということは……」
「流氷の結界の一部として機能している」
リアムは歩きながら続けた。
「宮殿内の泉は四カ所あるが、今見えている中央の泉が一番大きい。氷の宮殿は短い夏でも雪が残る。そして泉は、この広いグレシャー帝国の川と繋がり作用している」
「帝国ってとても広いのに、泉の水は帝国の川全部と繋がっているということですか?」
リアムは立ち止まると、遠くに見える泉の一つを指差した。