炎の魔女と氷の皇帝*転生したら弟子と契約結婚をすることになりました*

氷の皇帝が望むしあわせ

違う。強く輝く炎のようで、正直、惹かれるものがある。だがーー

「師匠と同じ瞳を持つ彼女が気にならないと言えば嘘になる。だから丁重に出迎えるし、待遇は良くするつもりだ」

 ジーンは「ええ。そうですね」とうんうんと頷いている。
 リアムは期待で浮かれている臣下に釘を刺そうと、彼の真正面に立った。














































氷の皇帝が望むしあわせ

「古老たちが早く妃を娶れとうるさいからそうしたが、来るのが隣国の魔女だ。同盟国とはいえ、魔女を皇后にすることに反対している者がいまだにいる。彼女が根本的な完治が無理だと気づき諦めるまでは付き合うが、故郷へ帰りたいと言えばすぐに願いを叶えてあげるつもりでいる」

 ジーンはにこりと笑った。

「令嬢の気持ち、身の安全が最優先ということですね。さすが我が主。自分の都合よりも相手の気持ちを慮るなんてとてもご立派です。しかし、陛下の家来として、……親友として言わせてもらえば、もう少しご自分の幸せについても欲張っていただきたい」

 リアムは眉根を寄せた。宰相として小言ばかりの彼の目が今日はとくに真剣だ。

『生きて、陛下も幸せになってください』

 ――俺の幸せか。……令嬢も同じことを言っていたな。

 死の間際の師匠も、弟子の幸せを口にしていた。だがしかし、その願いは叶えられない。
 彼女のいない世界に、幸せなど存在しないからだ。

 人生を共にするパートナーが欲しいと思えない。血の繋がった子どもがいる未来が、想像できない。

「俺の幸せは、みんなが幸せになることだよ」

 ――この命は師匠からいただいたもの。守られた命は無駄にはできない。

今いる大切な人のために使うことだけが、リアムの唯一の願いだった。

「陛下……!」
「静かに」

 リアムは不服そうな顔をするジーンの言葉を手で遮った。雪を踏みしめる音が聞こえたからだ。
 振り向いた先には、炎の鳥を肩に乗せたミーシャがいた。

「あの、ごめんなさい。お話の邪魔をするつもりはなかったの。起きたら陛下がいなかったので、心配で……」

 ミーシャはリアムが初日に渡した白い外套を羽織っていた。雪の中、佇んだままの彼女に近づく。

「俺を探しに来たのか?」
「はい」
「今後は探さなくていい」

 彼女はなにか言いたそうに口を開きかけたが、すぐに唇を引き結んだ。お辞儀をして「仰せのままに」とさがる。
 雪交じりの風が、彼女の朱鷺色の髪をさらりと揺らす。朝陽に透けて輝いて見えた。

「きみの髪は、やっぱりきれいだ」

 ふと、()いで出た言葉に、目を見開いている彼女より自分が驚いた。炎の鳥が空に舞いあがる。
 リアムは咳払いをすると外套を脱ぎ、ミーシャの肩にかけた。
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