炎の魔女と氷の皇帝*転生したら弟子と契約結婚をすることになりました*
「これは?」
「懐炉です。侍従のみなさまは、石を暖めた温石を持っているとお聞きしました。懐炉を携帯してみてはいかがと思いまして」
イライジャは懐炉を受け取るなり、驚いたようすで顔をあげた。
「暖かいですね。中身は、どういう物ですか?」
「主に炭を粉末にしたものが入っています。あとはイヌタデという植物の灰や桐の灰、麻殻の灰とかを調合し、火をつけて金属の容器に入れております。石よりも温かく、長く保つんですよ。まずは陛下に献上しますが、許可がおりればみなさまもぜひ、使ってみてください」
炎の魔女として、凍える人を放っておけない。
極寒の宮殿で、懸命に働く人たちを少しでも温めてあげたかった。
懐炉は、クレア時代から培った知識を総動員した。実験を繰り返して今の形に落ち着いた自信作だ。
「フルラにも短い冬がありますが、みんな、寒いのが苦手なんです。懐炉は私が研究して作った物ですが、故郷ではとても好評でした。私の侍女たちにも試しに使ってもらっています」
ライリーは自分の懐炉をイライジャに見せて、ほほえんだ。
「安全は保証します」
「わかりました。ひとまずこれを陛下に届け、出かける許可を取って参ります」
「お願いします。イライジャ卿」
しばらくして、懐炉を受け取ってくれたリアムから外出の許可がおりた。
*
「……そっちの道に行くな。怖い魔女のお通りだ」
回廊を進んでいたミーシャは立ち止まると、声がした方へ視線を向けた。
遠巻きにこちらを見ているのは、宮殿勤めの高官たちだ。目が合うとぱっと顔を逸らし、姿を隠してしまった。
「未来の皇后に対して、失礼ですわね」
「私が一言、物申して参りましょう」
ユナとサシャが眉間にしわを作りながら、腕の袖を捲る。最近知った。彼女たちは思っているよりも活発で、勝ち気だ。
「ユナとサシャ、いいのよ。私はなにを言われても気にしないわ」
彼女たちをなだめると、炎の鳥を呼んで、手のひらに乗せた。
「懐炉です。侍従のみなさまは、石を暖めた温石を持っているとお聞きしました。懐炉を携帯してみてはいかがと思いまして」
イライジャは懐炉を受け取るなり、驚いたようすで顔をあげた。
「暖かいですね。中身は、どういう物ですか?」
「主に炭を粉末にしたものが入っています。あとはイヌタデという植物の灰や桐の灰、麻殻の灰とかを調合し、火をつけて金属の容器に入れております。石よりも温かく、長く保つんですよ。まずは陛下に献上しますが、許可がおりればみなさまもぜひ、使ってみてください」
炎の魔女として、凍える人を放っておけない。
極寒の宮殿で、懸命に働く人たちを少しでも温めてあげたかった。
懐炉は、クレア時代から培った知識を総動員した。実験を繰り返して今の形に落ち着いた自信作だ。
「フルラにも短い冬がありますが、みんな、寒いのが苦手なんです。懐炉は私が研究して作った物ですが、故郷ではとても好評でした。私の侍女たちにも試しに使ってもらっています」
ライリーは自分の懐炉をイライジャに見せて、ほほえんだ。
「安全は保証します」
「わかりました。ひとまずこれを陛下に届け、出かける許可を取って参ります」
「お願いします。イライジャ卿」
しばらくして、懐炉を受け取ってくれたリアムから外出の許可がおりた。
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「……そっちの道に行くな。怖い魔女のお通りだ」
回廊を進んでいたミーシャは立ち止まると、声がした方へ視線を向けた。
遠巻きにこちらを見ているのは、宮殿勤めの高官たちだ。目が合うとぱっと顔を逸らし、姿を隠してしまった。
「未来の皇后に対して、失礼ですわね」
「私が一言、物申して参りましょう」
ユナとサシャが眉間にしわを作りながら、腕の袖を捲る。最近知った。彼女たちは思っているよりも活発で、勝ち気だ。
「ユナとサシャ、いいのよ。私はなにを言われても気にしないわ」
彼女たちをなだめると、炎の鳥を呼んで、手のひらに乗せた。