炎の魔女と氷の皇帝*転生したら弟子と契約結婚をすることになりました*
「こうやって、炎の鳥を操って歩いているでしょう? 魔力がない人からしたら、きっと怖い存在よ」
「ミーシャさまは、寛大過ぎます」

 頬を膨らませて怒っているユナとサシャにミーシャはほほえんだ。

「私のせいで、肩身の狭い思いをさせてごめんね。二人とも、私の侍女になってくれて、本当にありがとう」
 
「私たちは、ミーシャさまに仕えてよかったと思っております」
「グレシャー帝国では、魔女は怖いとすり込まれて育つので、失礼な態度を取る者たちがいて、申しわけございません。ですが、ミーシャさまがやさしいかたなのはきっと、伝わると思います」

 ユナとサシャは遠い縁者にフルラ国の者がいるという。そのためか、魔女への偏見はなく、とてもいい子だった。

 敵意の真ん中に飛びこむとわかって氷の国に来た。魔女を恐れない侍女二人の存在は、ミーシャにとっては僥倖(ぎょうこう)だった。ありがたくて、大切にしたい気持ちでいっぱいだった。

 ――二人を采配してくれたリアムとジーンに、感謝だわ。

 ジーンや他の人にも懐炉をあげたい。そのためにも材料がもっとたくさんいる。
 ミーシャは久しぶりに許された外出を無駄にしたくないと気合いを入れ直した。


 庭に出ると冷たい風が頬をかすめた。外套のフードを手で抑えて空を見あげる。口からこぼれる息が白い。雪を踏みしめるときゅっと音が鳴った。その感覚が楽しい。

「どこを見ても、まっ白ね」
「ミーシャさま、この雪の中、薬草を探すのは大変ですよ……」
「ええ。大変で、やりがいがありそうね」

 ライリーに向かって、にこりと笑いかけた。

「欲しい薬草はないかもしれないけれど、寒い地にはそれに適した草が生えている。フルラ国にはない、なにかお宝が見つかるかもしれない」
「……そうでした。あなたさまは言い出したら聞かない人でした。わかりました。がんばって雪かきします!」

 ライリーは半泣きの顔で、大きなスコップを握った。


 数時間後、庭で雪をかき分けて探索したが、目新しい草は見つからなかった。
 薬草や花を探しながら、雪うさぎを作ってライリーたちと遊んだ。イライジャは寒い場所でも動じずにじっとこちらを見ている。護衛というより、監視に近い。

「ミーシャさま、もう雪遊びは十分でしょう。戻りましょう」
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