炎の魔女と氷の皇帝*転生したら弟子と契約結婚をすることになりました*
ミーシャに心配かけないよう平気を装っているみたいだが、彼から漏れだす冷気は隠しきれていない。
「日中、イライジャさまに届けてもらった懐炉はいかがでしたか?」
「温かくて、よかった。今はもう、冷めてしまったが」
リアムは懐から布で包んだ懐炉を出してミーシャに渡した。触れてみると冷たくなっていた。
侍女たちに持たせた懐炉はまだ温かさを保っている。一般の人とは違い、氷の皇帝では懐炉の持続も短いようだ。
――完治はほど遠い。このままでは、リアムの寿命は確実に削られていく。
近い未来、彼は氷の像のように固まって息を止めるだろう。かつての愛弟子を失いたくない。カップをぎゅっと握りながらミーシャは口を開いた。
「陛下、薬草スープよりも効果がある治療方法を、試してみませんか?」
「聞かせててくれ」
「魔鉱石です」
リアムの表情が冷たく固まった。
「クレアが発明した魔鉱石が、治療に役にたつでしょう」
「魔鉱石は、十六年前の戦いですべて燃えた。……きみが持つそれ以外は」
ミーシャはブレスレットをしている自分の手首を押さえた。
「陛下は、お気づきだったんですね」
「もちろん。だが、試作品か失敗作かなんかだろ? 魔力が弱い」
「製作途中の物、つまり未完品です。私はこれがあるおかげで、小さな火と、炎の鳥を操れます。故意に隠していたわけではありません」
「大丈夫。わかっているよ」
リアムは危険がないと判断し、黙っていたという。
「それを、俺にくれるというのか?」
「いえ、違います。これは、陛下の治療に不向きでしょう」
未完品とはいえ、このブレスレットと炎の鳥が傍にいなければ、ミーシャは魔力不足で動けなくなる。手放すことはできない。
「私が提案しているのは完成品のクレア魔鉱石です」
リアムの反応を見逃さないように、じっと見つめながら伝えた。しかし、彼の表情は揺るがなかった。
「クレア魔鉱石はあの日、師匠がすべて燃やした。もうこの世にはない」
「日中、イライジャさまに届けてもらった懐炉はいかがでしたか?」
「温かくて、よかった。今はもう、冷めてしまったが」
リアムは懐から布で包んだ懐炉を出してミーシャに渡した。触れてみると冷たくなっていた。
侍女たちに持たせた懐炉はまだ温かさを保っている。一般の人とは違い、氷の皇帝では懐炉の持続も短いようだ。
――完治はほど遠い。このままでは、リアムの寿命は確実に削られていく。
近い未来、彼は氷の像のように固まって息を止めるだろう。かつての愛弟子を失いたくない。カップをぎゅっと握りながらミーシャは口を開いた。
「陛下、薬草スープよりも効果がある治療方法を、試してみませんか?」
「聞かせててくれ」
「魔鉱石です」
リアムの表情が冷たく固まった。
「クレアが発明した魔鉱石が、治療に役にたつでしょう」
「魔鉱石は、十六年前の戦いですべて燃えた。……きみが持つそれ以外は」
ミーシャはブレスレットをしている自分の手首を押さえた。
「陛下は、お気づきだったんですね」
「もちろん。だが、試作品か失敗作かなんかだろ? 魔力が弱い」
「製作途中の物、つまり未完品です。私はこれがあるおかげで、小さな火と、炎の鳥を操れます。故意に隠していたわけではありません」
「大丈夫。わかっているよ」
リアムは危険がないと判断し、黙っていたという。
「それを、俺にくれるというのか?」
「いえ、違います。これは、陛下の治療に不向きでしょう」
未完品とはいえ、このブレスレットと炎の鳥が傍にいなければ、ミーシャは魔力不足で動けなくなる。手放すことはできない。
「私が提案しているのは完成品のクレア魔鉱石です」
リアムの反応を見逃さないように、じっと見つめながら伝えた。しかし、彼の表情は揺るがなかった。
「クレア魔鉱石はあの日、師匠がすべて燃やした。もうこの世にはない」