炎の魔女と氷の皇帝*転生したら弟子と契約結婚をすることになりました*
前世の記憶
廊下に出ると、月のような銀色の光りの粒が点々と続いていた。リアムの魔力のあとだ。
光を辿るように進むと中庭に出た。氷の泉の前に彼の背を見つけ、駆け寄った。持ってきた外套を肩にかけてあげる。
「きみは部屋にいろと言っただろ」
「そういうわけにはいきません」
ほどなくしてジーンやイライジャが護衛兵を連れて駆けつけてきた。
「陛下。異変ですか?」
ジーンに質問されて、リアムは頷いた。
「数は多くない。ここより西の地域だ。イライジャ、使者の手配を」
「御意」
イライジャは臣下の礼をすると、すぐに走り去った。
リアムが指示を飛ばす横でミーシャは凍ったままの泉を覗き見た。青白く発光しているようすを眺めていると、ふと人の影が浮かび上がってきた。
「え……?」
驚きで息を吞んだ。胸に鋭い痛みが走る。もっと近づいて見ようとしたが、リアムに腕をつかまれ、引っ張られた。
「結界に近づくな。きみは炎の魔女だろ。冷気に当てられる」
「私には炎の鳥がいます」
彼はちらりと炎の鳥を見たあと、「無理はするな」と言った。
「結界を補強する。ここはかまわないから他の者は建物内に戻れ」
囲いを飛び越え、泉の上に立ったリアムは、凍っている表面に素手で触れ、魔力をそそぎだした。
彼を中心に冷たい雪交じりの強風が吹く。
「ミーシャさまもここから離れたほうがいいです。戻りましょう」
ジーンに促されたが、ミーシャは首を横に振った。
「私は大丈夫です。陛下の傍にいます」
このままではあっという間に凍えてしまう。
彼が魔力をそそぎ終わったあと、すぐに温めてあげたほうがいい。炎の鳥も連れてきたから大丈夫だと、その場に待機すると伝えた。
ジーンも臣下もさがり、再び二人だけになった。
闇夜に白い雪が降り続けている。ミーシャは黙ったままのリアムの背に話しかけた。
「結界が反応した相手は、オリバー大公殿下でだったのですね……」
立ちあがり、ゆっくりと振り返ったリアムの瞳は、碧く冷たい光りを放っていた。
光を辿るように進むと中庭に出た。氷の泉の前に彼の背を見つけ、駆け寄った。持ってきた外套を肩にかけてあげる。
「きみは部屋にいろと言っただろ」
「そういうわけにはいきません」
ほどなくしてジーンやイライジャが護衛兵を連れて駆けつけてきた。
「陛下。異変ですか?」
ジーンに質問されて、リアムは頷いた。
「数は多くない。ここより西の地域だ。イライジャ、使者の手配を」
「御意」
イライジャは臣下の礼をすると、すぐに走り去った。
リアムが指示を飛ばす横でミーシャは凍ったままの泉を覗き見た。青白く発光しているようすを眺めていると、ふと人の影が浮かび上がってきた。
「え……?」
驚きで息を吞んだ。胸に鋭い痛みが走る。もっと近づいて見ようとしたが、リアムに腕をつかまれ、引っ張られた。
「結界に近づくな。きみは炎の魔女だろ。冷気に当てられる」
「私には炎の鳥がいます」
彼はちらりと炎の鳥を見たあと、「無理はするな」と言った。
「結界を補強する。ここはかまわないから他の者は建物内に戻れ」
囲いを飛び越え、泉の上に立ったリアムは、凍っている表面に素手で触れ、魔力をそそぎだした。
彼を中心に冷たい雪交じりの強風が吹く。
「ミーシャさまもここから離れたほうがいいです。戻りましょう」
ジーンに促されたが、ミーシャは首を横に振った。
「私は大丈夫です。陛下の傍にいます」
このままではあっという間に凍えてしまう。
彼が魔力をそそぎ終わったあと、すぐに温めてあげたほうがいい。炎の鳥も連れてきたから大丈夫だと、その場に待機すると伝えた。
ジーンも臣下もさがり、再び二人だけになった。
闇夜に白い雪が降り続けている。ミーシャは黙ったままのリアムの背に話しかけた。
「結界が反応した相手は、オリバー大公殿下でだったのですね……」
立ちあがり、ゆっくりと振り返ったリアムの瞳は、碧く冷たい光りを放っていた。