炎の魔女と氷の皇帝*転生したら弟子と契約結婚をすることになりました*
リアムはすぐに氷の盾を形成して攻撃を防ごうとしたが、いくつかが身体にめり込んだ。苦しそうに顔を歪めながらその場に倒れた。

 弟子のもとへ駆け寄ろうとしたが、オリバーに先越されてしまった。まだ子どもの彼の腕をつかむと、無理やり引き起こした。冷酷な眼差しで甥を見下ろしている。

『この者は我が甥に(あら)ず! 魔女に操られた裏切り者だ。勇敢な兵士よ。悪いのは魔女だ。惑わされずにクレアを討て!』

 リアムは、くぐもった声をあげながらも抵抗しオリバーを睨んだ。

 青色の魔鉱石は不完全な代物で、それを持つ兵士たちは、命を燃やすことで最強になれた。石からの魔力と、氷を身にまとっているため、炎の中を平気で進む。
 身体は大きくなり、筋力も常人より数倍強く、一振りでフルラ兵数人が吹き飛んだ。

 魔鉱石は魔力を持たない人への負担が大きく、使っている最中に自我を失い凶暴化していく。
 兵士はみんな目が血走り、焦点が合っていない。言葉を失い、うなり声ばかりをあげる獣と化していた。

 命令には従順で、クレアに向かって数十人もの兵士が一斉に襲いかかった。

『叔父上!』 

 リアムがオリバーの手に触れ、魔力を暴発させる。触れた場所から凍りついていくのに、オリバーは涼しい顔で言った。

『リアム、おまえのおかげでフルラ王もフルラを守護する魔女も油断してくれた。よくやった』

 クレアは炎を使って襲い来る兵を退けながら、その言葉を聞き、リアムの絶望に染まる顔を見た。

『僕を、利用……したのか!』
『察したか。賢いな。だが、教えただろう。なんでも鵜呑みにするのはよくないと』

 オリバーは身体の氷を、服についた雪のように軽々と払いのける。リアムが再び魔力を使おうとすると、首をつかまれた。そのまま上へ、簡単に持ちあげた。

『リアム、判断を謝ったな。残念だが、弱いおまえにはもう用はない』
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