炎の魔女と氷の皇帝*転生したら弟子と契約結婚をすることになりました*
 昔クレアは、リアムが力を暴走させたとき、抱きしめて彼をなだめた。あの頃のようにミーシャは、リアムをぎゅっと抱きしめた。

「あなたは氷の皇帝。もう、幼くて非力だった皇子じゃない。頼れる仲間もたくさんいる。大丈夫。だから、一人ですべて抱えこまないで」

 過去を背負うのは自分だけでいい。リアムは哀しみに囚われないで前に進んで欲しい。
今度こそ、大事な彼を守りたい。身体も、心も救ってあげたかった。

 手が震える。それを悟られないように、ミーシャは炎の鳥にも手伝ってもらい、なけなしの魔力を使い続けた。

「抱えこむな、か……」

 思いが通じたのか、彼はふっと力なく笑うと、魔力を使うのをやめた。

「取り乱して、すまない」

 リアムが剣から手を放したのを見て内心ほっとした。彼を抱きしめていた腕の力をゆるめ、そっと彼から離れる。

「過去に、オリバー大公殿下はフルラに奇襲をかけました。今回も警戒して、対策は立てたほうがいいでしょう。どうするか、みんなで考えましょう」

「ああ、そうだな。きみの言うとおりだ。今は情報収集と体勢を整えるべき。イライジャの報告を待とう」

 ミーシャは頷きを返した。

「イライジャさまが戻られるまでのあいだ、陛下の傍にいます」

 本当はなにもせずに休ませてあげたいところだが、気が立って無理だろうと思った。それならせめて、彼が凍えてしまわないように温めてあげたい。

 上空を旋回している炎の鳥を呼ぼうと手をあげる。

「きみの傍にいたいのは俺のほうだ」

 リアムはミーシャの正面に立つと、あげていた手を取った。
 引っ張られ、身体が彼の腕の中に収まってしまい、思わず息を飲んだ。

 顔が燃えているみたいに熱い。
さっきは思わず抱きしめてしまったが、まさか、リアムに抱きしめ返されるとは思っていなかった。どうしたらいいかわからなくて、ミーシャは固まった。
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