直月くんは、キケンな恋に沼りたい


はぁぁぁぁ~。


なんで今朝に限って、昇降口に立っているかなぁ。

二人の前を通らないと、校舎に入れないじゃん。


直月の前を通りたくない。

目を合わせたくない。

話しかけられたくない。

作り笑顔をキープする自信が、全くないし。



「亜里沙、うちらが壁になってあげようか?」


「真奈美先輩?」


「強がって笑ってるけど、ほんとは辛いんでしょ?」


「そんなことは……」


「見たくないものは瞳に映さない。これ、心を守る方法だからね」


「ありがとうございます。でも心配しすぎですってば。私はもう、完全に吹っ切れてますから」


「しんどい時は、甘えていいんだからね」


「アハハ~。だから私、恋に傷つく乙女タイプじゃないんですってば」



無理して笑えば笑うほど、心がギューっとなるのはなぜ?

心臓が焼かれたように痛みだすのは、なんでだろうなぁ。

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