直月くんは、キケンな恋に沼りたい


精一杯強がって、みんなと笑いながら直月の前を通り抜ける。


「おはようございます」


目を合わせず、挨拶だけはしておいた。



「あっ、おはよう」



戸惑いを隠せないような直月の声が、私の耳を切なくさせる。


私の大好きな声だ。

低くて、男らしくて、そっけない。

この3か月間、私からの告白を断り続けた残酷な声でもある。



嫉妬しちゃダメ。

そう思えば思うほど、直月への想いが募ってしまうからしんどい。



恋をしないと決めていた直月。

彼の頑固なこだわりを溶かしたのは、私じゃなくて柚葉ちゃんなんて……


その現実が苦しくて、ギューッと目をつぶりたくなっちゃう。


五感を全てシャットアウトして、直月を感じられなくできたらいいのに。

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