【BL】SAY YOU LOVE ME




ここの所帰宅は深夜だ。

くたくたに疲れていても、加湿器のスイッチだけは必ず入れる。


遠山さん経由で、涼さんがくれたものだ。


静かな夜の部屋に、微かな蒸気が吐き出される。
それを眺めるのが習慣になっていた。



毎日が忙しなく、渦に巻き込まれるように訳も分からず過ぎていく。


ゆっくり落ち着き1日を振り返りながら、涼さんとの小さな繋がりを感じることで、不安や愚痴を話せる相手がいない寂しさを紛らわせていた。



最新型の仕事用にと支給された携帯電話には、未だ遠山さん以外から連絡がない。


個人的に持っていた携帯は電源を切っている。
時間が出来たら解約するつもりだ。
店が閉店してからは、個人的に以前の常連客に買われることで食いつないでいた。
身寄りも友人も居ない僕の携帯は、その連絡用としてしか機能していなかったのだ。



けれどこの孤独に負けて電源を入れたくなることがある。


誰でもいいから、話を聞いて欲しかった。



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