【BL】SAY YOU LOVE ME
オレも車を出した。
そのまま真っ直ぐマンションを目指し、コンビニに立ち寄って朝飯を買い込み帰宅した。
久しぶりの自宅の空気に安堵する。
もともと枕が変わると眠れないくらい、ホテル暮らしは苦手なのだ。
あの記者会見の日。
振り返ればあの日、ミナトくんがヴォーカルになることを承諾してくれた日から走り出したのだ。
バンドも会社もミナトくん自身も。
それぞれが迅速に、新しく始めるべきことを始めなければならなかったから。
心ではいつもミナトくんを気にかけていても、活動の中軸である楽曲の作成は最優先事項だった。
遠山やKouが頼んでもいないのに事細かく様子を伝えてくるから、脳裏にはいつも不安気なミナトくんが浮かんでいた。
そのうち頭はミナトくんの姿をイメージすることに支配されて、曲作りをするいつものスタイルとはかけ離れた精神状態になってしまった。
さし迫るスケジュールに焦っていると、逆にミナトくんのことを正面から考えてみる気持ちになった。
そうしたらあまりにアッサリ曲が出来た。
その曲が当の本人であるミナトくんに聞かれる。
歌われる。
そう思った時、人生で一番の恥ずかしさを感じた自分がいた。