【BL】SAY YOU LOVE ME

電話の向こうからはカツカツとヒールで歩く音が忙しなく聞こえて来る。
遠山は息を切らせているらしい。


「だから!ミナトくんは行ってるかって聞いてるのよ!
居なくなったの!」


オレは思わず携帯を耳から遠ざけまじまじと見つめた。




今、何て言った?




「もしもし?どうなの!?
こっちは急いでるのよ!」


「居ないよ!っつーか、居なくなったってどういうことだよ!?」

「知らないわよ!」

思わず大声を出したオレに容赦ない叫びで返ってきた。



知らないって……



オレは暗闇の中車のキーを探した。
とりあえず立ち上がり帽子を被り、投げ出していた上着を掴む。


ここでじっとしているワケにもいかない。



「涼……どうしよう…」


ため息をつき落ち着いた声で遠山が呟いた。
それでもヒール音は鳴り止まない。


「探しに行こう。とりあえずお前はミナトくんのマンションに行け。
オレは……とにかくあちこちを見て回るから」


「うん」

電話を切ろうとする遠山を慌てて引き止める。

「待て。重要なことを聞き忘れた!
居なくなったのは何時頃なんだ?」


「午前中に初めての取材があったの。音楽雑誌2社よ。その時はKouも私も同席したし、何もおかしな様子は無かったんだけど、昼食を取ってヴォイトレに移動しようとしたら居なくて。それが2時半前のことよ」


時計を見ると6時を過ぎていた。


「分かった」

オレは電話を切った。

「もっと早く連絡しろっつの…」
1人ぼやきながら家を出た。






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