【BL】SAY YOU LOVE ME
涙を見たらタメ息が出た。
顔にかかる髪にイライラしかき上げる。
責めたいワケじゃない。
そうじゃないけど、上手く言えない。
慰めたいワケでもなかった。
オレがその世界の事情を詳しく知る由もないが、なかったことには出来ないだろうとは覚悟していた。
いつかはこうなることも。
確かに予定より早かったのは計算外だ。
何が目的か知れない男には腹が立つ。
けれどミナトくんが、今回のヴォーカルの件を固辞していた理由はこの過去があるからだった。
乗り越えて『やる』と決意してくれたからには、身勝手かもしれないが覚悟した筈だ。
この現実も。
だから逃げないで欲しかった。
どうすべきか、考えることからすら逃げているように見える。
他の理由なら、どんな不安でも取り払うつもりでいた。
自信を持って明日のレコーディングに望めるように。
「ゴメン、泣くのはやめて…」
今までにミナトくんには向けたことのない声を出した。