【BL】SAY YOU LOVE ME
街行く人々は立ち止まり大型モニターを見上げた。
DJが仰々しく売り文句を並べる中、18秒の前奏がバックで響いている。
続いて流れてくる自分の声を思うと、自然に眉間に皺が寄ってしまう。
オレは何気なさを装い、周囲の反応を盗み見ようと視線を走らせた。
気づくだろうか?
ライブでなければ分からない、と言ったのはプロデューサーだった。
僅かな、しかし確かな声の変化。
高音はミキサーで誤魔化し、かすれ具合も敢えてそう歌っているように出来上がっている。
それでも、ファンは騙し通せないだろう。
オレ自身は今回のシングルを見送りたいと希望したけど、すでに発売日も決まり宣伝が大々的にされていた。
ここで発売を止めたら何があったかマスコミに嗅ぎ回られる。
仕方無かった……。
割り切ろうとしたが、不本意な歌を発表してしまったことはリスナーへの裏切りに違い無かった。
どんな理由であろうと、ミュージシャンとして許されないことをしてしまった。
そう思うと今の自分は、この運命は、なるべくしてなったのかもしれない。
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