【BL】SAY YOU LOVE ME
「いらっしゃいませ。あら、矢神さん!?どーしてたのご無沙汰ねぇ」
背後でママが入店して来た客に声を上げた。
僕は思わず振り向いた。
矢神、と呼ばれた男はみつるの馴染み客で、このところ全く姿を見せなかった。
みつるは連絡しても返事がない、としきりに心配していたのだ。
彼は某テレビ局のプロデューサーで、みつるは俳優や歌手になりたい、という話をベッドでよくするらしい。
夢の実現の足がかりに、実際コネが重要なんだから、とみつるは彼に料金以上のサービスを心掛けているようだ。
反面僕はあまり、この矢神という男を好きになれなかった。
多分みつるが話す、矢神の高圧的な要求が自分なら我慢出来ないものだからだろう。
ママの声でみつるが慌ててやって来た。
「矢神さん!やっと来てくれたの!?僕何回も電話やメールしたのに、ちっとも返事してくれないから心配してたんだよ。僕の他に好きな子出来たの〜?」
最後は甘えるようにみつるが抗議をした。
「悪かったよみつる。番組編成で揉めて忙しかったんだ。俺がみつるだけだって知ってるだろぉ?」
答えた声は呂律が回っていない様子だ。
「矢神さん、酔ってる?」
とみつるが聞いた。
「…それに痩せたね。僕ますます心配だな」
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