【BL】SAY YOU LOVE ME



近づいて来たウェイターにコーヒーを注文すると、ママは吹っ切るように顔を上げて微笑んだ。



「私ね、田舎に帰ることにしたのよ。東京の物は店もマンションも何もかも手放しちゃった!」



事件を境に店は警察の立ち入り捜査を受けた。
あの店は一見ただのバーで、売春や風俗営業違反の証拠はない。


結局ママは罪に問われなかったけど、店を閉めたのだ。

素性が分からない少年達は散り散りになり、みんな何処で何をしているのか、僕には知りようがなかった。


「そう………なんですか」


僕はぼんやり、あのママが想いを寄せていたお客さんを思い出していた。



「……私にはみつるもミナトも、皆が息子みたいなものだったわ。東京には大事で捨てられないものがまだ沢山あるけど、それ以上に失ったものが大きすぎるの」



「田舎に帰ったら何をするんですか?」



「ふふ、うちね福島で桃農家なのよ。私がこうだとカミングアウトした時、父に絶縁されてね二度と帰ってくるなって言われたわ。だけどこうして姿を改めて土下座したの…農家を継がせて下さいって」


細い指が名残惜しそうに短くなった髪を撫でた。



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