元皇女なのはヒミツです!

1 最後の手紙

 お会いしたことのない方との手紙の交換だけで相手を好きになるなんて、おかしいでしょうか?

 私、エカチェリーナ・ニコラエヴナ・アレクサンドルは決められた婚約者がいました。その方は私の住むアレクサンドル帝国の三つ隣にあるリーズ王国の王太子フレデリック・リーズ様です。
 広大な領土を持つ帝国の更に三つ隣ですから、私たちはなかなか会える機会がありません。そこで、その隙間を埋めるように、フレデリック様は私にたくさんの手紙をくださいました。そして私もたくさんの手紙を書きました。それは月日とともに何通も何十通にも積み重なっていきました。
 私は文章から垣間見える彼の人柄にどんどん惹かれていって、いつの間にか恋慕の情を抱くようになっていたのです。





 ――なぁんて。

 努力は必ず報われるなんて嘘。
 諦めなければ夢は叶うなんて嘘。
 頑張っていればいつか王子様が……なんて全部嘘。

 努力は報われなかったし、諦めたくなくても結局夢は叶わなかったし、王子様とは婚約解消。
 革命でアレクサンドル帝国は滅んでしまって、身分も財産も全部毟り取られて、残ったものは命だけ。
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