元皇女なのはヒミツです!
落胆したままふらふらと自室に戻った。
新たな婚約者候補は何人かいるが、おそらくフローレンス嬢に決まるだろう。
彼女のことは昔から苦手だった。
いつも微笑みを絶やさず所作も優雅で教養もあって令嬢のお手本のような人物だが、彼女の魔力からはどことなく底知れぬ冷たさを感じるのだ。
彼女なら王太子妃としての役割をそつなくこなすとは思うが、果たして国民を愛する心は持っているのだろうか。
それに、僕は彼女を愛することができるのだろうか。
……こんなことを考える自分はなんて不誠実なのだろうか。
「くそっ……!」
やるせなさのあまり、怒りをぶつけるように机をドンと叩いた。その衝撃でティーカップが揺れて中のお茶が跳ね上がる。
どこにいるんだ、エカチェリーナ。
僕にはもう、時間がない。