元皇女なのはヒミツです!


「まぁまぁっ! リナさん、こんなところにいらっしゃったの!」

 私たちが立ち話をしていると、背後からグレースがわざとらしく大声で話し掛けてきた。

「は……?」

 思わず眉間に皺が寄る。彼女がこんな風に親しげに声を掛けてくるときは絶対になにか裏があるのだ。
 グレースはフレデリック様とオスカー様にカーテシーをしてから、

「アルフィー先生がリナさんを呼んでいたわよ。さ、行きましょう?」と、ジェシカとデイジーとともに私を引っ張って行った。

「えっ! ちょっ……! で、殿下、オスカー様、失礼いたします!」

 私は三人に押さえ付けられて抵抗できずに、そのままずるずると引きずられて行く。
 そして、

「出過ぎた真似をしているんじゃないわよ! この平民がっ!」

 乱暴にゴミ捨て場に打ち捨てられた。
 衝撃で尻もちをつく。顔を上げると、三人は勝ち誇ったように私を見下していた。

「なんのこと?」と、私も負けずに彼女らをギロリと睨む。

「はぁっ!? なんのこと、ですってぇ! 平民さんは分からないのかしら? 王太子殿下とオスカー様に馴れ馴れしく話し掛けるんじゃないわよっ!!」

 私は目をぱちくりして、

「さすがにそんな無礼なことしていないわよ。いつも殿下たちのほうからお声を掛けてくださるの」

「はああぁっ!? なによそれ! 自慢!? 自慢してるのぉっ!?」

「なにかしら、この図々しい平民は!」

「なんて厚かましい女!」

 三人は口々に私を罵った。
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