元皇女なのはヒミツです!
「醜いわね……」
私は思わず呟いた。
「は? 今、なんて言ったの?」
公爵令嬢は眉間に皺を寄せて私を見る。
しまった。公爵家にそぐわないような無様な様子に呆れてしまって、つい口を滑らせてしまったわ。
ふと、叔母様のことを思い出した。お父様の妹で皇族であるということに誰よりも誇りを持ち、その肥大化したプライドがおかしな方向へ行ってしまった方だ。
彼女は常に周囲を見下していて傲慢な態度を取り、皇族という特権を活用してやりたい放題だった。
伯爵家に嫁いでからも変わらずに、彼女と似た性質の夫君と一緒になって散財し税を吊り上げ更にはドレスや宝石の請求書を皇室に送り付けて、おまけに彼女の息子も問題ばかり起こしていて、革命では真っ先に一家全員殺された。
お父様は叔母様にちょくちょく注意はしていたみたいだけど、小さい頃から一緒だった可愛い妹に心を鬼にすることができなくて、それが彼女の横暴を助長させてしまったのよね。
……これは、未来のフレデリック様と公爵令嬢だわ。
公爵令嬢をこのまま放置しておくとシェフィールド家の崩壊どころか、リーズ王家にも火の粉が降り掛かる可能性が高い。今のうちに矯正させなきゃ、そのうちとんでもないことになる。
私はきっと公爵令嬢を睨め付けて、今度ははっきりと言った。
「聞こえませんでしたか? 醜い、と申し上げたのです、公爵令嬢様」