元皇女なのはヒミツです!
「あなた、自分がなにを言っているのか分かっているの? ……っていうか、誰よあなた」
「私はリナと申します。今日から公爵令嬢様の魔法の家庭教師を務めさせていただく者です」
「家庭教師ですって?」公爵令嬢は鼻で笑った。「わたしにそんなものは必要ないわ。帰りなさい!」
「これは公爵閣下から正式ご依頼を受けたものです。帰りません」
私と公爵令嬢はしばらく睨み合った。そして、
「あなた、わたしのことを醜いと言ったわよね? まずは貴族に対して非礼を詫びるべきじゃないかしら? さ、早く跪いて頭を床に押し付けなさい?」
「お断りします。私は本当のことを述べただけですから。非礼でもなんでもありません」
「なんですってぇっ!? あなた、ふざけているの! わたしが謝れと言っているのだから謝りなさいよ!」
「嫌です。私は間違ったことは言っていません。むしろ公爵令嬢様がメイドたちに酷い仕打ちをしたことを謝るべきでしょう? さぁ、謝ってください」
「馬鹿にしてるのっ!?」公爵令嬢が大声で叫んだ。「あなた、何様のつもりっ!? わたしは公爵令嬢よ! 使用人は大人しくわたしの言うことを聞きなさいっ!」
「私は使用人ではなくて、あなたの家庭教師です。生徒は先生の指導に従いなさい。さぁ、メイドたちに謝罪をして、それから私と一緒にこの散らかった部屋を片付けるのです。魔法は精神の集中力を研ぎ澄ませることが大切です。まずはその甘ったれた根性を叩き直すことから始めましょう」