元皇女なのはヒミツです!
「どうしよう……」
私はかれこれ半刻近く出店の近くをウロウロしながら悩んでいた。その間もお腹はどんどん凹んでいく。早く食べたい。でも、怖い。
「店主、三つ頼む」
私が逡巡していると、隣をすっと男の人が通り過ぎて迷わず出店へ向かってさっと買い物を終えた。彼は両手に包み焼きを持って踵を返す。
私はため息をつく。いいなぁ、あんな風に簡単に買い物ができるなんて。なんて羨ま――、
「はい。一つどうぞ」
「ほぇ?」
気が付くと、買い物を済ませた彼が私の眼前に立っていた。そして笑顔で包み焼きを一つ手渡してくれる。
「あ、あの……!」
次の瞬間、私は目を見張った。
なんて整った顔立ちかしら!
絹のように上品に煌めく金色の髪に宝石のような輝きを内包した藍色の瞳。磨かれた彫刻のようなのに冷たい気配はなくて、ふわりと柔らかい優しい雰囲気が周囲まで明るく灯す。その芸術のような姿に思わず虜になった。