元皇女なのはヒミツです!
「お兄様! 笑いごとじゃない! この女ったら酷いの!」と、公爵令嬢はさっきの意地悪な姿とは打って変わって甘える素振りを見せた。こういうとこは年相応で可愛いわね。フレデリック様が愛らしいって思う気持ちも分かるかも。
「アミィ、とっても楽しそうに魔法を打っていたじゃないか。なにが酷いんだい? ――そうだ、これから三人でお茶でもしないか? 今日の授業の話を是非聞きたいな」
「絶対に嫌っ!!」と、公爵令嬢が大音声で叫んだ。
「王太子殿下、私もこのあと掛け持ちの仕事があるので申し訳ありませんが、辞退しますわ」と、私は頭を下げた。
「そうか。それは残念だな。じゃあ、従妹の魔法を見てくれたお礼に僕からのプレゼント」
フレデリック様が私に向かって指を鳴らすと、暖かい光が眉のように私を包んた。そして乱れた髪も焼け焦げた制服も全て美しく生まれ変わった。
「うわぁっ……! ありがとうございます!」
「いや、こちらの方こそ今日はありがとう」
「お兄様! こんな女に貴重な回復魔法なんて使わないで!」
「アミィ、リナ先生だろう? ほら、先生に魔法を教えてくれたお礼を言って?」
「嫌ぁっ!!」と、公爵令嬢はプイッとそっぽを向いた。
フレデリック様は苦笑いをして、
「ごめんね、リナ嬢。これに懲りずにこれからも従妹のことをよろしくね」
「はい、王太子殿下。では、公爵令嬢様。また来週参りますね」
「もう来なくて結構よ! あなたなんて大っ嫌い!!」
こうして、家庭教師初日はとりあえず無事に終わった。
……あぁ、疲れた。