元皇女なのはヒミツです!

「えっ……!」

 アメリアは大好きな従兄の思い掛けない発言に憮然として二の句が継げなかった。
 なんで、お兄様まであの女なんかの味方をするの? お兄様はわたしの一番の味方じゃないの?

 フレデリックは困ったように軽く息を吐いて、

「たしかに醜いというのは言い過ぎだけど、自分の身分の高いことを利用して弱い立場の者に辛く当たることはいけないことなんだよ。アミィも叔父上からよく怒られているだろう? もっと相手の気持ちも考えなさい、って」

「だってぇ……」

 皆わたしの気持ちを分かってくれないんだもん、と言いかけてアメリアは口を噤んだ。
 理由は分からない。でも、物事の全てに無性に腹が立ってしょうがない。だが、そのモヤモヤした気持ちを幼い彼女には言葉にするのは難しかった。

「それに、リナ先生のおかげで魔法の命中率が上がってきたんじゃないか? だから、次の授業も頑張ろう?」

「そ、それは……」

 アメリアはリーズ王家の血を引いているだけあって絶大な魔力を持っているが、その操作能力はてんで駄目だった。魔法をまっすぐ飛ばそうとしても右へ逸れる。小規模な魔法を使おうとしても大爆発を起こしてしまう。そんな状態にいつもむかむかしていた。

 だが、今日はいつもとは違った。憎きあの女に痛恨の一撃をお見舞いしたいと強く思うと、自然と意識が研ぎ澄まされて魔法の軌道が見える気がした。
 でもそれは、あの女のおかげじゃない。自分の力だ。
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