元皇女なのはヒミツです!



 意外にも公爵令嬢は私の言うことに素直に耳を傾けてくれて、授業は穏やかに始まった。

「――ですので、上手に魔法を操作するには心を落ち着かせることが重要なのです。前回のあなたのご様子だと、まずは精神力を鍛えたほうが良いでしょう。いつまでも感情的のままでは上達しませんよ。あんなに魔力があるのに勿体ない」

「だって……」公爵令嬢は意気消沈した様子で小さく言う。「自分にも分からないの。なにをやっても思い通りにならなくて、全部のことに腹が立つんだもん……」

 にわかに彼女の境遇が頭に過ぎって私は物悲しい気分になった。
 やっぱり、母親を亡くしたことが幼い少女の心に棘のようにずっと突き刺さっているのね。彼女より年長の私でさえ家族を亡くしたのは辛かったんですもの。立ち直るのはなかなか難しいわよね……。
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