元皇女なのはヒミツです!
「では、公爵令嬢様」
私はしゃがみ込んで彼女と目線を合わせた。
「心がむかむかしたら、ぐっと我慢をして一度感情を自分の中に仕舞い込むんです」
「そんなの、どうやって?」と、公爵令嬢は丸い瞳をぱちくりさせた。
「簡単なことです。公爵令嬢様の大好きな人の笑顔を思い出すんです。そうしたらきっと心がぽかぽかになってすぐに落ち着きますよ」
「わたしの、大好きな人……」
「そうです。王太子殿下? 公爵閣下? それとも……?」
「おっ……」公爵令嬢は少し顔を赤らめてポツリと呟いた。「お母様……」
私はニコリと微笑んだ。
「そうですか。では、これからは怒りそうになったら公爵令嬢様のお母様のお顔を思い出してくださいね」
公爵令嬢はパッと顔を明るくして、
「うん! そうする! わたし、もう怒ったり意地悪をしたりしないように気を付けるわ! だって、お母様のお顔が悲しくなったら嫌だもん」
「それは、良い心掛けです。きっとお母様も天国で見守っていらっしゃいますよ。それにこのままだと公爵令嬢様がギロチン送りになるところでしたので、私も一安心です」