元皇女なのはヒミツです!
「セルゲイ!」
「グレースを黙らすには丁度いい話題だろ?」と、彼は私に耳打ちをした。
そんなこと言ったって、グレースなら絶対に乗って来るじゃない。これ以上、捜索隊が増えたらどうするのよ。
「あら?」グレースの表情が打って変わって穏やかになった。「エカチェリーナ様はリーズにいらっしゃるの?」
ほらね……。
「さぁな。だが公爵令嬢がそうおっしゃるんでな」
「わたしの勘よ。きっとエカチェリーナ様はフレディお兄様の近くにいらっしゃるわ。あなたたちもなにか情報があれば教えなさい」
「もちろんですわ、公爵令嬢」と、グレースは嬉しそうに答えた。
「……あなたもエカチェリーナ様のことが好きなの?」
「当然! エカチェリーナ様こそ我がリーズの王太子妃に相応しいわ!」
それを聞くと不機嫌だったアメリア様はパッと笑顔になって、
「そうなの! エカチェリーナ様が王太子妃になるべきよね!」
「そうですわ! あんなに慈愛に満ちて民を愛する方、他にいないわ!」
「そうよね! 皇女殿下はとってもお優しい方なのよ!」
二人でエカチェリーナの話題で盛り上がり始めた。
「ね、ねぇ……ちょっと静かにしてくれないかな……?」と、私が言っても二人とも聞く耳を持たずに話を続ける。
「ねぇ、もう止めよう……?」
「人気者だな、皇女様は」と、セルゲイがくつくつと笑った。
その日はカフェでお開きとなった。
帰り際、グレースもエカチェリーナの捜索に加わると聞いて激しく目眩がした。
もうっ、セルゲイが余計なことを言うから! 諦めるどころか仲間が増えているじゃないの!