元皇女なのはヒミツです!
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親愛なるフレデリック様
ついにリーズ王国へ向かうことになりました。あなたの国に伺えるのをとても楽しみでしたので、本当に嬉しく思います。
今日は旅の道中でたくさんの初めての経験をいたしました。ただ一人旅をするだけなのに戸惑うことでいっぱいです。自分は物事を全く知らなくて、なんて狭い世界で生きていたのだろうと酷く思い知りましたわ。
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少し書いてペンをそっと脇に置いた。
意味のない手紙。
私はアレクセイさんの家に厄介になってからもずっとフレデリック様に手紙を書き続けている。もう決して彼に届くことはないのに、何通も何通も。
我ながら滑稽だと思うけど、それは習慣になってしまって止められなくて、今では日記のようなものだと割り切っている。
「馬鹿馬鹿しいわね……」
私はおもむろに立ち上がり、書きかけの手紙を放置してベッドに戻った。