元皇女なのはヒミツです!

「とっても美味しかったわ。またいただきたいわね」と、アメリア様は上品にナプキンで口を拭いた。

「恐れ入ります、公爵令嬢様」わたしはいたずらっぽく笑って「タマネギもニンジンもピーマンもちゃんと召し上がりましたね」

「えっ……!?」

 アメリア様は凍り付いた。

「気付きませんでした? ハンバーグの中に刻んで混ぜていたのです」

「……騙したのね!」と、彼女は打って変わってプリプリと怒りだした。

「いいえ、言い忘れていただけですよ」

 私は何食わぬ顔で答える。

「信じられない!」

「アミィ、リナ嬢のおかげで苦手な物も克服できて良かったじゃないか」

「全然よくない! リナの嘘つき!」

「でも、ちゃんと食べたじゃないですか。ご立派です」

「ふんっ!」

「まぁまぁ。――そうだ。アミィ、今日はリナ嬢にお願いがあって来たんだろう? 美味しい料理で忘れるところだったよ」

「お願い、ですか?」

 私は目をぱちくりさせた。改まって、なにかしら。

「そうなんだ。ほら、アミィ。自分で言ってごらん?」

「あ、あのね……!」アメリア様は今度は緊張した様子で頬をほんのり赤く染めて「今度ね、大きなお茶会にお呼ばれしているの。それで……リナがわたしの付き添い人として付いてきて欲しいの! お願いっ!」

「えぇぇっ!?」

 それは、答えに窮するような予想外の困ったお願いだった。

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