元皇女なのはヒミツです!


「そんな! 頭を上げてください!」

 私はあたふたして両手をぶんぶんと振った。一国の王太子が平民に頭を垂れるなんて、絶対に駄目!
 すると、アメリア様まで彼に倣ってペコリとお辞儀をしてくる。私は一気に血の気が引いた。

「分かりました! 分かりましたから! だから頭を下げないで~~~っ!!」

 もうっ、外から護衛が険しい顔で私を見ているじゃない! 止めて~っ!

「本当かい?」と、フレデリック様はパッと笑顔になった。

「本当?」アメリア様も満面の笑顔を見せる。

「本当です。だから、お二人とも平民に軽々しく頭を下げないでください。もっとご自身の立場というものを自覚なさって?」

「そんな、お願いするのに身分なんて関係ないよ」

「そうよ!」

「あるのです! 良いですか、上に立つ者がけじめをつけないということは下に悪影響を及ぼします。少しくらいなら……などという甘い考えが規律――身位の高いお二人の場合は国でしょうか。国そのものを乱す呼び水となるのです。民を愛することは素晴らしい。ですが、線引きは大事ですわ。あなた方はリーズ国を背負っているのですから、言動には細心の注意を払うべきです。よろしくて?」
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