元皇女なのはヒミツです!
「王太子殿下」
フローレンス様がこちらへ向かって来て、気品溢れるカーテシーをした。平民の私は彼の後ろで深く頭を下げる。
「やぁ、フローレンス嬢。今日はお招きありがとう」
「こちらこそ、来てくださってありがとうございます」
「…………」
アメリア様はとても緊張した様子で身体がしゃちこばっていた。息をするのも忘れているように、彼女だけ時間が止まっている。
「アメリア様、ご挨拶」慌てて私は背後から耳打ちをする。「練習通りやれば大丈夫ですよ。頑張って」
「ごっ……」
彼女の背中をそっと押すと、やっと声が出た。
「ご機嫌よう、フローレンス侯爵令嬢。本日はお招きありがとうございます」と言って、可愛らしくカーテシーをする。
「アメリア様、ご機嫌よう。本日はようこそいらっしゃいました」
アメリア様はきちんと挨拶ができたことに満足したのか、少し緊張が解けたみたいだ。こんなに大勢の人が来場している会は初めてらしいので実はちょっと心配だったけど、杞憂に終わりそうね。
「あら? 後ろの方は……?」