元皇女なのはヒミツです!
そのとき、フローレンス様が不思議そうに私のほうを見た。私は再び頭を垂れる。
「君も知っての通りのリナ嬢だよ。彼女は従妹の家庭教師をしていて、今日は付添人として来てもらったんだ」
「まぁっ、そうなのね。さすが特待生ね」
「恐れ入ります、フローレンス様」
「では、わたくしはホストとしての仕事がありますので、一旦失礼いたしますね。殿下、宜しければまたお話しましょう」と、フローレンス様は優雅に去って行った。
「ねぇ、リナ。わたしの挨拶はどうだった? ちゃんとできてた?」
さっきまでガチガチに緊張していたアメリア様が興奮気味に尋ねてきた。
「素晴らしかったです。カーテシーも綺麗でしたよ」
「そう? ま、わたしは公爵令嬢だからね。できて当然だわ」と、彼女は今度はおすまし顔で答える。私とフレデリック様は顔を見合わせてくすりと笑った。
「リナ嬢、今日はアミィをよろしく頼むね。もしマナー違反をしそうになったら遠慮なく咎めて大丈夫だから」
「かしこまりました、殿下」
今日は私は背後の壁となってアメリア様を見守るわ。
「わたしはマナー違反なんてしないわよ!」
「今日はお行儀良くできるかな? ――さ、どこから回ろうか?」