元皇女なのはヒミツです!

 そのときだった。

「王太子殿下、御機嫌よう」

「本日はまさかいらっしゃるとは思いませんでしたわ」

「やはり、フローレンス様は特別だからかしら」

「殿下、あちらにお茶を用意しておりますので」

「王太子殿下ぁ~」

 フレデリック様の周囲に引き寄せられるように令嬢たちがわらわらと集まって来た。そしてあっという間に彼が見えなくなる。
 やっぱり、王太子となると令嬢たちに人気なのね。特にフレデリック様は人当たりが良いし、話し掛けたくなるのかもしれないわね。……あまり面白くないけど。

「…………」

「…………」

 私とアメリア様はちょっとの間、令嬢たちがいなくなるのを待っていたが、

「リナ、行きましょう」

 彼女たちが離れる気配が全くないのでしびれを切らしたアメリア様がすたすたと向こう側へと歩き始めた。

「えっ……ちょ、ちょっと! どこへ行かれるのですか?」

 私は慌てて彼女を追いかける。

「セルゲイのところよ」

 小さなお姫様はたくさんのお兄さんお姉さんたちの中を掻き分けて、愛しの公爵令息を一人で探しに行ったのだった。


< 167 / 371 >

この作品をシェア

pagetop