元皇女なのはヒミツです!


 そして国境から数日間ゴトゴトと馬車に揺られて、やっと王都に着いた。

「うわぁ……!」

 王都はお祭のような賑やかさだった。フレデリック様曰く曇りの日の多いリーズ王国で雲ひとつない晴天の日が貴重なこともあるのだろう。街の人々は買い物や散策を楽しんでいた。大通りは人でごった返して活気立っていた。

「あれは!」

 白と薄いピンクのストライプ模様の外装に目が行った。たしかここは令嬢たちに人気のカフェだわ。
 あ、隣には可愛くて値段も庶民にも手の届く価格帯で人気だというブティックがある。フレデリック様の手紙に書いてあった通り、二軒とも女の子の行列ができているわ。

 私はお上りさんよろしくキョロキョロと頻繁に首を動かしながら興味深く辺りを見て回ったが、ふとした拍子にはっと我に返る。

 こんなことをやっている暇はないわ!

 私はリーズ王国に観光に来たんじゃなかったわ。しばらくここに身を隠すことになるので、住む所と仕事を探さなければいけないのだ。

 アレクセイさんからは皇女時代の私の財産が残っていたと十分過ぎるくらいのお金をもらった。でも元々はこれは国民からの税金だからなるべく手を付けたくない。だからここで生活をしていくために労働をしなければ。
 私は周囲の景色を見ないように早足で職業案内所へと向かった。

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