元皇女なのはヒミツです!

38 侯爵令嬢のお茶会③

「あちらに行きましょうか」

 そのテーブルにはアメリア様と同年代の貴族の子女たちが5、6人集まってお茶とお菓子を頬張りながら、楽しそうにわいわいとお喋りをしていた。

 卒然と、アメリア様の足が止まる。

「アメリア様?」 

 彼女は梃子でも動かないとばかりにその場に踏ん張って、押しても引いても駄目だった。

「どうしたのですか? 行きましょう?」と私が言っても、彼女はふるふると首を横に振るだけだ。

「だって、なんて話しかければいいか分かんないもん……」

 アメリア様はすっかり怖気付いていた。屋敷では威勢がいいのに、意外に内弁慶な子なのよね。

「大丈夫ですよ。ご機嫌ようって挨拶をして、アメリア・シェフィールドですって言うだけですから。あとはお友達のお名前を聞けばいいんです。それで知っている家門だったら、そこから話を広げればいいのですよ」

「で、でもぉ……」

「じゃあ、俺と一緒に行こうか」
< 172 / 371 >

この作品をシェア

pagetop