元皇女なのはヒミツです!
「やっぱり!」
「平民が盗んだのね」
「手癖の悪い女、他にも余罪があるはずだわ」
「これだから平民って嫌よね」
「早く兵士に突き出しましょう」
「盗人が王太子殿下に近付くなんて恐ろしい」
「休日は娼婦をやっているって噂を聞いたわ。やっぱり、そういう女なのよ」
令嬢たちは口々に私を罵った。
私は不意打ちの出来事に面食らって目をチカチカさせた。
やられた。
さっき誰かに押されて転んだときに後ろに人の気配がしていたのだ。おそらく、そのときにポケットに入れられたのだろう。なんて卑劣な……!
「侯爵家の食器を壊して、おまけに盗みだなんて……どうするつもりなのかしら、この平民は」
「私はやっていないわ」と、私は彼女たちをきっと睨み付けた。
「やっていないって実際にネックレスを持ってたじゃない」
「泥棒」
「まぁ、怖い」
「っつ……」
私は二の句が継げなかった。全身が打ち震える。身体の内部からたぎるように熱くなった。
どう抗弁したところで平民に勝ち目はない。兵士も裁判官も立場の強い貴族の味方だ。平民の話なんて誰も聞いてくれない。
悔しさのあまり涙が出そうになる。でも、ここで泣いたら彼女たちの思う壺だわ。だから、我慢するしかない。平民は泣いたって許されないのだ。