元皇女なのはヒミツです!
騒動が一段落したときだった。令嬢たちが再びざわめき出した。
「ちょっと! あなたのせいであたしが恥をかいたじゃない! どうしてくれるの?」
「はぁ? 言い出しっぺはあんたでしょう?」
「私たち、関係ないし」
「誰があんなこと言い出したのよ」
「どうせグレースたちでしょ?」
「はぁっ!? あたしじゃないわよ!」
「なによ。あなたたちはいつも率先して平民に嫌がらせをしているじゃない」
「今回は違うわ! あたしたちは見てただけよ」
「いいえ。グラスを三個もまとめて平民に押し付けてたわ」
……またぞろ、令嬢たちの低次元の口論が始まる。
私は呆れ返った。彼女たちはさっきフレデリック様から言われたことをもう忘れたのかしら。貴族としての自覚が低すぎる。
そう考えている間にも彼女たちの争いはどんどん激しくなった。
「っていうか、グレースって王太子妃に帝国の皇女様を推しているんでしょう? 邪魔なフローレンス様に平民を使って嫌がらせを目論んだじゃないの?」
「はあぁぁぁっ!? なに言ってるの! そんなこと考えてないわよ!」
「どうだか」
「なんなのよ! あたしに喧嘩を売ってるの!?」
「別に。本当のことを言っただけよ」