元皇女なのはヒミツです!
「お前ら、いい加減にしろ」と、セルゲイが咎めるが、ヒステリックに怒る彼女たちは聞く耳を持たなかった。
令嬢たちは罪の擦り付け合いを始めだして、場が再びごたつき出す。
私は戸惑ってその様子を見つめた。
不味い。このままでは若い貴族たちに亀裂が入って将来に禍根を残してしまう。未来のリーズ王国を導く貴族たちがこのような有様では、政治が混乱して最悪は国を滅ぼしかねない。
もしそうなったら、なによりフレデリック様に危険が及ぶ可能性がある。それだけは絶対に嫌だ。彼に私の家族のような目には絶対に合って欲しくない。
私は意を決して、軽く息を吸ってから、
「王太子殿下、侯爵令嬢様!」
会場の隅まで行き渡るように大声で叫んで、
「私が騒ぎを起こしたせいで、お二人や会場の貴族の方々にご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでしたっ!!」
跪いて、頭を擦り付けるように地面に付けた。
「リナ、止めろ!」と、セルゲイが私の腕を掴むが振り払う。
「全ては私が招いたことです。責任は全て私にあります。ですから、罰するのならどうか私だけに……!」
楽しいはずのお茶会の会場は、深夜の森のように静まり返る。
これでいい。平民の自分一人が悪者になれば全てが丸く収まる。令嬢たちも憎しみ合わなくて済むし、むしろ私を共通の敵にすることで団結力が高まるかもしれない。
裁かれるのは平民だけでいい。貴族たちは未来のリーズ王家を支えて行くという大事な使命があるのだから。