元皇女なのはヒミツです!
「顔を上げなさい」
しばらくして、フローレンス様が声を上げた。目の前には満面の笑顔の彼女の姿があった。その完璧な様相になんだかぞっとした。
「そんなことをしないで? むしろ謝るのはわたくしのほうよ。このようなことになって、ホストとして心が痛むわ。ごめんなさいね」
「で、ですが……場をめちゃくちゃにして……それに弁償を……」
「あら、いいのよ。これくらい。気にしないで」
「フローレンス嬢、そのことは後でリーズ家とシェフィールド家で話し合おう」とフレデリック様。
「本当にいいのに」彼女はふっと微笑を浮かべる。「リナさん、今日は疲れたでしょう? もうお帰りなさいな」
優しいはずの彼女の言葉は有無を言わせないような迫力があった。
「分かりました……」
私はふらふらと立ち上がった。
「わたしも――」
アメリア様が言いかけたが、フレデリック様が彼女の両肩を掴んだ。
そして、
「リナ嬢、待ってくれ」と、私のもとへ駆け寄った。