元皇女なのはヒミツです!
私は目を見張った。
身体が凍り付いて、一瞬で流氷のように重くなる。
全ては、彼女の掌の上で踊らされていたのね……!
今思えば、侯爵家のメイドや執事たちがあんなこと見過ごすはずがない。彼らなら令嬢たちが私に食器を寄越す前に、すっと動いていたに違いない。きっと主人の命令で敢えて見てみぬ振りをしていたのだ。
それもこれも、フレデリック様と婚約するため……?
眼前の美しい侯爵令嬢がにわかに別の恐ろしい生き物に見えた。その笑顔も優雅な振る舞いも全部、彼女の中にある底知れぬ暗い闇を隠すための、まやかしだったのね……。
冷や汗が額を伝った。