元皇女なのはヒミツです!




 僕は投げるようにペンを机に置いて、ため息をついた。

 あのお茶会から数日間、リナ嬢は体調不良で学園を休み続けている。
 アミィと二人でお見舞いに行ったのだが、具合が優れずに他人と会う余裕がないと追い返されてしまった。
 そして、セルゲイ公爵令息を通じてアミィの家庭教師の辞意を伝えてきた。

 自分の無責任な行動のせいで彼女を追い詰めてしまった。しかも、小さな従妹も悪くないのに自身を責めて毎日泣いている。
 僕は二人の女の子を悲しみのどん底に突き落としてしまって、情けなくて不甲斐なくて自己嫌悪で身体全体が麻痺するような感覚だった。


 リナ嬢については気掛かりなことがある。
 あの日、騒ぎの現場に向かう途中で、彼女が宣誓をしようとする様子を遠くから認めた。
 宣誓とはアレクサンドル人の名誉を掛けた発言を行う際にするポーズだ。心臓に手を添えて神と祖国の地と父親に誓うのだ。あのとき彼女は確かに「父ニコライ」と言った。
 ニコライはアレクサンドル人によくある名前だが、帝国の最後の皇帝の名でもある。

「僕はどれだけエカチェリーナに固執しているんだ……」

 あまりに突飛な考え過ぎて、思わず自嘲の笑いを漏らす。
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