元皇女なのはヒミツです!


 始業前のがやがやしていた教室は、私たちが入室した途端にピタリと騒音が消えて静まり返った。
 クラスメイトたちはコソコソと話しながら冷たい視線を私に送る。いつにも増して居心地が悪かった。

「……泥棒」

 そのとき、誰かが囁いた。途端にくすくすと忍び笑いが起こる。セルゲイが咎めるが、効果は皆無だった。
 私はみるみる顔が上気して、俯いた。にわかにお茶会での出来事が頭に過ぎる。生まれてこのかた物を盗んだなんて責められたのは初めてなので、心臓がバクバクした。

「あんたもこれで思い知ったでしょう? 平民が図々しくも王太子殿下に近付くからこんなことになるのよ」と、グレースが鼻で笑ってきた。

 私は彼女に反論する元気もなく「そうかもね……」と、力なく笑うだけだった。

「これに懲りたら身の程を弁えなさい。あんたはリーズに来ないでアレクサンドルに引きこもってれば良かったのよ」
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