元皇女なのはヒミツです!
「お客さん」
そのとき、さっきの受付の方から声を掛けられた。私ははっと我に返る。
「あ……すみません。つい見入ってしまって」
「いいんですよ。ところで、入学試験に興味あります? 魔法が使えるのですか?」
私は戸惑って少し黙り込んだが、
「……はい」
誘惑には勝てなかった。
「それは素晴らしい」受付の方はニコリと微笑んだ。「では、折角の機会だから受けてみてはいかがですか? 特待生制度もありますし」
「特待生?」と、私は目をぱちくりさせた。
彼の話によると学園には特待生制度というものがあって、魔力の高い平民はそれを利用して入学するそうだ。
特待生は授業料など全てが無料になる。もっとも、継続して優秀な成績が求められるので入学してからも相当な努力が必要らしいが。だから特待生になるには至難の業のようで、ここ数十年間一人も現れず、元平民で現準子爵の法務官が最後の特待生らしい。
魔法学園を卒業すると、本人の実力にもよるが平民でも国の中枢に関わる仕事ができるそうだ。
もしかしたら、フレデリック様の近くで働けるのかもしれない。
……いえ、私はいつかは連邦国に戻るのよ。そんな夢のような話なんてあり得ないわ。
でも、同じ学び舎で過ごすくらいは許されるわよね……?
「入学試験の受付は中央図書館で行っています。宜しければ、場所を教えましょうか?」
にわかに胸に早鐘が鳴った。
私はゆっくりと頷いた。