元皇女なのはヒミツです!

「それで、グレースなんだけど……」

「あぁ、別に気にしていないわ。いつものことだしね。……でも、彼女は皇女に対してとても思い入れがあるみたいね」

「そうなのよ。リナは三年前に起きた東部の水害のことを知ってる?」

「もちろん。とてつもない被害が出たって聞いているわ」

 約三年前、リーズ王国東部地域でこれまでに見ない大規模な水害が起こった。被害は莫大で、その地域に住む国民たちは飢餓に苦しんだ。私もそのときは心を痛めて、できる限りの支援をしたのを覚えているわ。

「被害に遭った地域の大多数はパッション伯爵家の領地だったのよ。だから、グレースの家は救援や復興で財政が逼迫して没落寸前まで行ったの」

「そんな……!」

 私は絶句した。

「それで、もう全てを諦めそうになったときにエカチェリーナ様が私財をなげうって支援をしてくださったのよ。おかげでパッション伯爵家も首の皮一枚で没落せずに済んだわけ」

「グレースは家の借金を返すために娼館に入る覚悟だったの。それがエカチェリーナ様によって救われたものだから、あんなに皇女殿下に心酔しているのよ」
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