元皇女なのはヒミツです!

「……っ!!」

 図星を指された一言にグレースは硬直した。その時ちょうど太陽が雲に隠れて、暗い影がじわじわと彼女を侵食していく。

「あら、その様子だと正解のようね。……実はわたくしも彼女には困っているのよ」と、侯爵令嬢は軽く息を吐いた。

「困っている……?」

「そうなの。言い辛いけど、リナさんは平民だから令嬢のマナーやルールを知らないでしょう? だから、現に王太子殿下やストロガノフ公爵令息に身分不相応にも纏わり付いているわ。おまけに平民が王弟殿下のご令嬢の家庭教師や付添人だなんて……。このままでは国中の貴族はもちろん、王家にまで悪い影響を及ぼす可能性があるわ。あなたもそう思わない?」

「…………」

 グレースの固くなっていた筋肉が少しだけ解れた。
 この女、意外に分かっているじゃない。そうよ、全てがあの帝国人の平民に責任があるのよ。平民が調子に乗ってズカズカと土足で貴族の世界に入って来たのがそもそもの原因なんだから……。
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