元皇女なのはヒミツです!
グレースは顔を上げた。
「大切なもの……」
そしておもむろに立ち上がり、学園へと戻って行く。
黒い影はたちまち彼女を支配して、胸の中に渦を巻いた。
◆◆◆
侯爵令嬢はニヤリと歪んだ笑みを漏らした。
上手く種をまけた。邪魔者たちは潰し合って、同時に消えればいい。
立場を弁えない平民と、エカチェリーナ派の伯爵令嬢。王太子妃として貴族世界を支配するために、不穏分子は今のうちに全て拭い去らなければ。
暗い影は集約されるように、するすると彼女の中に入って行った。