元皇女なのはヒミツです!

 私は再び黙りこくった。なんて返せばいいか分からなかった。
 アレクサンドル帝国の建国時から存在する歴史の長いストロガノフ家は祖国に対する愛情が特に強いので、グレースにあんなことを言われて彼は酷く傷付いたと思う。彼女の言い分は正論かもしれないけど、彼はそんな薄情な人間ではない。はるばる遠いリーズまで来たのも、並々ならぬ決意あってのことだと思うから。きっと彼も革命で心が疲弊しているのだ。
 私はいつもセルゲイに守られてばかりで、肝心なときに彼を救うような一言さえ掛けることができなくて、もどかしかった。

 それからしばらく、ザクザクと二人の足音だけが響いた。
 ふと、規則的に鳴っていたセルゲイの音だけが途切れる。一歩先を行く私は驚いて振り返った。

「どうしたの?」

 にわかにセルゲイが私の手を握った。
 そして、私の瞳を吸い込むように真っ直ぐに見つめて、

「……なぁ、もういっそのこと二人でどこかへ逃げ出そうか?」

「えっ……?」
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