元皇女なのはヒミツです!
「まぁっ、帝国人同士で相変わらず仲がよろしいこと?」
そのとき、背後からグレースの声が聞こえてきた。はっとして振り返ると、彼女は口元を歪ませて邪悪な笑みを浮かべていた。
「王太子殿下にちょっかいを出して、今日は公爵令息? 本当にお盛んな平民ね」
背筋がぞくりとした。
なんだか、いつもの彼女と雰囲気が違う。普段は意地の悪さの中にも子供っぽい無邪気さを残している彼女なのに、今はなんだかそれらを搾り取って悪意だけが残った感じだった。
「グレース、今日は授業も出ないでどうしたの? 皆心配していたのよ」
「そうだぞ。さっきジェシカとデイジーが君の家に向かった。二人は特に心配しているから早く追いかけたほうがいい」
「そうね、用事が済んだらすぐに帰るわ」と、グレースはゆっくりとした足取りでこちらへと向かって来る。彼女が近付くにつれてぞくぞくと悪寒が走った。剣呑な空気が圧縮するように私たちへと押し寄せて来る。